大阪地方裁判所 平成9年(ワ)2076号 判決 2000年3月15日
原告
平尾晋也
被告
株式会社弁慶
ほか一名
主文
一 被告らは、各自、原告に対し、金九二七万一四〇〇円及びこれに対する平成七年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを二分し、その一原告の、その余を被告らの負担とする。
四 この判決は、一項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、各自、原告に対し、金一八一三万三四五三円及びこれに対する平成七年一〇月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
一 争いのない事実
1(本件事故)
(一) 日時 平成七年一〇月二九日午前一〇時ころ(晴)
(二) 場所 大阪府八尾市山本町五丁目一〇番六号先路上(八尾茨木線)
(三) 加害車両 被告浦博之(以下「被告浦」という。)運転の普通貨物自動車(大阪四〇よ九四八四)
(四) 被害車両 原告運転の普通乗用自動車(大阪五〇つ三五四六)
(五) 態様 接触
2(被告株式会社弁慶の責任)
被告株式会社弁慶は、本件事故当時、加害車両を所有し、自己のために運行の用に供していた者であるから、自動車損害賠償保障法三条に基づく責任がある。
3(損害填補) 九九万六五三四円
二 争点
1 被告浦の責任、過失相殺
(原告)
被告浦は、加害車両を運転中右折すべく待機中であったところ、前に右折の順番を待っている車両があったのであるから、順番に従い、かつ、右折を実行する際には、対向直進車両のないことを確認して右折を実行すべき注意義務があるのに、前方で待機中の車両を追い越し、かつ、前方を確認しないで右折を開始した結果、直進してきた被害車両を衝突させたのであるから、民法七〇九条に基づく責任がある。
(被告ら)
本件事故は交差点への双方黄色表示での進入事故であるから四割の過失相殺をすべきである。
2 傷害、治療状況
(一) 傷害
頭部打撲、腰椎捻挫、右膝打撲、右第五指打撲、仙腸関節炎
(二) 治療状況
(1) 医療法人徳洲会八尾徳洲会病院
平成七年一〇月二九日から平成八年七月四日まで通院(実通院日数四三日)
うち、平成八年五月三一日から同年六月三日まで四日間検査のため入院
(2) 医療法人長生会布施病院
平成八年七月一七日から同年八月二五日まで入院
その後通院
3 後遺障害
原告は、平成八年一二月末症状固定し、腰椎捻挫、右仙腸関節炎の後遺障害があり、その結果、未だに痛みがひかず、胸腰椎部に運動障害が発生し、長時間座ること及び長時間歩行することが困難であり、これは局部に頑固な神経症状を残すものとして、後遺障害別等級表一二級に該当する。
4 損害
(一) 治療費 一五四万一二八〇円
(二) 入院雑費 四万四〇〇〇円
一日一〇〇〇円、四日分
一日一〇〇〇円、四〇日分
(三) 通院交通費 七万円
(四) 休業損害 三五二万六〇二七円
年間給与 三〇〇万円
平成七年一〇月二九日から平成八年一二月まで四二九日
(五) 傷害慰謝料 一七五万八九〇〇円
(六) 逸失利益 八九四万九七八〇円
労働能力喪失率 一四パーセント
原告(昭和四三年八月一日生)就労可能年数三九年
300万円×0.14×21.309=894万9780円
(七) 後遺障害慰謝料 二二四万円
(八) 弁護士費用 一〇〇万円
5 素因減額
(被告ら)
原告には、腰椎椎間板ヘルニアの既往症があったから、五割の素因減額をすべきである。
第三判断
一 争点1(被告浦の責任、過失相殺)
争いのない事実1(本件事故)に証拠(乙二、原告本人、被告本人)を総合すると、次の事実が認められる。
1 本件事故現場の状況は、別紙交通事故現場見取図(以下地点を示す場合は同図面による。)記載のとおりであり、南北方向の道路(以下「本件道路」という。)と東西方向の道路が交差する信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)である。
2 原告は、被害車両を運転して、本件道路を南から北に向かい本件交差点に至り、<ア>地点で先行車両が左折進行するのに追従して、本件交差点に直進進入した(時速は約一〇キロメートル)。
原告は、<イ>地点で対面信号機が黄色表示であることを確認している。
3 被告浦は、加害車両を運転して、本件道路を北から南に向かい本件交差点に至り、<2>地点で対面信号機が黄色表示であることを確認しながら、先行右折待機している<甲>車両の後ろから同車両右側に出て右折進行しようとして<4>地点で被害車両右前部と加害車両前部が衝突した(衝突地点は<×>地点)。以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
右に認定の事実によれば、被告浦は、前に右折待機中車両があったのであるから、順番に従い、かつ、右折を実行する際には、対向直進車両のないことを確認して右折を実行すべき注意義務があるのに、前方で待機中の車両の横に出て右折進行使用としたものであって、前方注視義務違反、右折方法の不適切の過失があるというべきであり、民法七〇九条に基づく責任がある。
また、右認定の本件事故状況からすると、原告に過失相殺しなければならない事情は見出せない。
二 争点2(傷害、治療状況)
1 傷害(甲二の1ないし8、三)
頭部打撲、腰椎捻挫、右膝打撲、右第五指打撲、仙腸関節炎
2 治療状況(甲二の1ないし8)
医療法人徳洲会八尾徳洲会病院
平成七年一〇月二九日から平成八年七月四日まで通院(実通院日数四三日)
うち、平成八年五月三一日から同年六月三日まで四日間検査のため入院
三 争点3(後遺障害)
証拠(甲三、原告本人、鑑定の結果)によれば、原告の傷害は、平成八年七月四日症状固定し、頸部捻挫による右小指、環指から前腕尺側の知覚鈍麻、第四、第五腰椎間の椎間板ヘルニアの増悪による右仙腸関節部の痛み、右上臀部の痛みが残ったことが認められる。
右は後遺障害等級一二級一二号に該当するものといえる。
四 争点4(損害)
1 治療費 五八万四一四〇円
証拠(甲五の1ないし9、弁論の全趣旨)によれば、原告の症状固定までの治療費は、五八万四一四〇円であることが認められる。
なお、医療法人長生会布施病院の入通院治療は、症状固定後の治療であって、本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。
2 入院雑費 五二〇〇円
平成八年五月三一日から同年六月三日までの検査入院期間四日間につき一日一三〇〇円の割合の入院雑費を認めるのが相当である。
3 通院交通費 二万一五〇〇円
症状固定までの実通院日数四三日について、一日五〇〇円(原告本人、弁論の全趣旨)の割合の通院交通費を要したことが認められる。
4 休業損害 九二万五〇〇〇円
証拠(甲九、一〇、原告本人、弁論の全趣旨)によれば、原告は、本件事故当時株式会社平尾化成の成型工として勤務し、月額二五万円(年収三〇〇万円)の給与を得ていたことが認められ、原告の受傷の部位、程度及び入通院状況からすると、症状固定までの八か月間について、当初の一か月は一〇〇パーセント、その後の二か月は六〇パーセント、その後の五か月は三〇パーセント労働能力喪失したものとして休業損害を算定するのが相当である。すると、次の計算式のとおり、九二万五〇〇〇円となる。
25万円×(1か月×1+2か月×0.6+5か月×0.3)=92万5000円
5 傷害慰謝料 八〇万円
原告の受傷の部位、程度及び入通院状況からすると、傷害慰謝料は八〇万円と認めるのが相当である。
6 逸失利益 八九四万九七八〇円
原告の後遺障害の内容からすると、労働能力喪失率は一四パーセント、就労可能年数三九年として逸失利益の現価を算定するのが相当であり、次の計算式のとおり八九四万九七八〇円となる。
300万円×0.14×21.309=894万9780円
7 後遺障害慰謝料 二二四万円
原告の後遺障害の内容からすると、後遺障害慰謝料は二二四万円と認めるのが相当である。
8 以上合計 一三五二万五六二〇円
五 争点5(素因減額)
証拠(甲一一、鑑定の結果)によれば、原告には、腰椎椎間板ヘルニアの既往症があったことが認められ、本件事故によりその症状が増悪したものであるから、前記損害額からその三割を減額するのが公平に適うというべきである。
そこで、前記損害額合計からその三割を控除すると、九四六万七九三四円となる。
また、九九万六五三四円が既に支払われているから、これを控除すると、八四七万一四〇〇円となる。
六 弁護士費用 八〇万円
本件事故と相当因果関係のある弁護士費用は、八〇万円と認めるのが相当である。
七 よって、原告の請求は、九二七万一四〇〇円及びこれに対する本件事故の日の翌日である平成七年一〇月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(裁判官 吉波佳希)